前回に引き続き・・・上野の東京都美術館で開かれている「コートルード美術館展」を
見るにあたってのコレ・・・わたしのイチオシをさらに3点、お伝えしよう。
「アルジャントゥイユのセーヌ河岸」
マネに関しては、今回「フォリー=ベルジュールのバー」がポスターになっていることもあって、かの絵の前は黒山の人だかりとなっている。確かに素晴らしい作品なのでじっくり見たいところだが、なかなかそうはさせてくれない。
だが、「フォリー=ベルジュールのバー」に負けず劣らず、素晴らしい出来栄えの作品があるのだ。それが本作「アルジャントゥイユのセーヌ河岸」である。1874年というから、第一回印象派展が開かれた年の作である。この時、マネはすでにここまでの境地に達していたのか・・・画中のモネ婦人の白い衣装やセーヌ川のさざ波のなんと瑞々しいこと・・・
この絵の周りは比較的すいているので、ぜひじっくりと見てほしい。
「桟敷席」
これも1874年作。ルノワール33歳の時の作品である。
永い間、図版だけしか見ていなくて、わたしはこの絵をあまり高く評価していなかった。だが、実物を見て見直した。まあ、この黒の美しいこと・・・マティスがルノワールを訪ねた時のエピソードにあるように、ルノワールは黒を非常にうまく使う人であった。どういうことか・・・それは本作をご覧あれ。
33歳のルノワールがそれほど高級な絵の具を使っているとも思えないのだが、どうやったら黒がこれほど光り輝くのか・・というくらい素晴らしい黒である。
「干し草」
ゴーガン41歳の作である。1889年、ゴッホとの共同生活が破綻した後、フランス北西部のブルターニュで描かれたものである。認めたくはないが・・・悔しいがゴーガンという人には良い絵を描く天賦の才があるらしい。こういう人はたまにいる。とびぬけて上手いわけでもなく、頑張っているわけでもなく・・・ただ、出来上がった絵がなんとなく良いのである。
これは良い絵だ。ちょっと離れたところから人の頭越しに見るといい。じつに・・・見せる絵なのだ。ちなみにこの絵は額縁との取り合わせも素晴らしいから、周りの空気も含めた全体をまんべんなく鑑賞することをお奨めする。
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