ロセッティ鑑賞のコツ

 

三菱一号館美術館で「ラファエル前派の軌跡」という展覧会が開かれているが、その中心人物だったダンテ・ガブリエル・ロセッティについて、その人となりと作品を鑑賞するコツについてお伝えしよう。

その生涯

ロセッティ・・・と聞いて想像がつくのだが、彼の父親はイタリア人である。しかもダンテ・ガブリエルなどというロマンティックな名前を息子につける、詩人にして学者だったのである。イギリスに亡命していた。

1828年生まれの彼は13歳で画業を志し、ロイヤル・アカデミーで美術を学ぶ。ずいぶんと早熟な少年だったようだ。早熟ゆえに二十歳の頃にはアカデミーに反発、当時アカデミーが規範としていたラファエロよりも以前の絵画を目指そうと「ラファエル前派」(プレ・ラファエライト・ブラザーフッド)を結成した。随分と手厳しい批評にさらされたようだが、画の売れ行きはまずまずだったようである。

問題は女性関係だ。イタリア人の血がそうさせたのかどうかは分からないが、彼は多感な人であった。まず、おそらく彼の画に登場するなかで最も有名な女性であろう、ジェイン・バーディン。彼より12歳年下で、のちに友人ウィリアム・モリスの妻となった。つぎにロセッティの妻となったエリザベス・エレノア・シダルー通称リジ―といわれる女性。そして、妻がいながら愛人関係を続けたファニー・コーンフォースという女性である。

ロセッティが33歳の時、妻リジ―がアヘンを大量に服用して死んでしまう。事故だったのか、自殺だったのか・・・ロセッティの女性関係に心を病んでいたようだ。自責の念に駆られたロセッティは酒やアヘンに溺れるようになった。眼病を患い、やがて左半身が麻痺。44歳で自殺未遂を起こした後はすっかち人間嫌いになり、53歳で死去した。

ベアタ・ベアトリックス

さて、では作品を見ていこう。代表作はやはりこれ「ベアタ・ベアトリクス」であろう。意味は「祝福されしベアトリーチェ」。1862~70年作。ロンドン、テート・ギャラリーが所蔵している。ベアトリーチェとは、あの「神曲」で有名な詩人ダンテの理想の女性である。

この絵のモデルとなったのは妻のリジ―である。リジ―はロセッティの妻となった女性だが、ロセッティにとって、リジ―という人はプラトニックな愛の対象だったようだ。画面の緑、赤、黄がじつに美しいが、なによりもモデルのリジ―の表情が素晴らしい。わたしはこの絵を見ると、イタリアの彫刻家ベルニーニ作「聖テレジアの法悦」を思い出す。

プロセルピナ

こちらは1874年作。同じくテート・ギャラリーの所蔵である。プロセルピナはローマ神話に登場する女性である。モデルはジェイン・バーディン。ジェインなくしてロセッティの絵画というものが成り立ちえたであろうか。そう思わせるほどまでにこのジェインというひとは素晴らしくひとを惹きつけるたたずまいをしている。エキゾチックなまなざし、意志の強そうなあご・・・説明するのも虚しいくらい、一言で言えば「絵になる」ひとなのである。ぜひ実物をご覧あれ。

 

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