シスレーの絵画

印象派の画家、アルフレッド・シスレーの絵画とはどのようなものだろうか。うーん、よく見かけるような気もするのだが・・・モネやルノアールに比べるとたしかに「どんなだっけ?」となるな・・・だが、まさにそこがシスレーのシスレーたるゆえんなのである。では具体的に見ていこう。

モレの教会 夕刻

パリのプティ・パレ美術館にある逸品である。良いものをお持ちだな・・・1894年、シスレー55歳の時の作品である。モレというのはいわゆるイル・ド・フランスといわれるパリ周辺の地域にある村の一つである。セーヌ川の支流、ロワン川の畔にある。この人は本当に絵が認められなかった。そもそも印象派の画家はなかなか世に受け入れられなかったのだが、それでもモネやルノアールはある程度のときを経過して売れるようになっていった。でもシスレーの絵は売れなかったのだ。失意のシスレーがパリを出てイル・ド・フランスの村々を転々とし始めるのは40歳をいくつか超えたあたりで、50歳以降はモレに腰を落ち着ける。

そんなモレの教会である。この絵を初めて見たときのことは忘れない。正面の尖塔がググっと膨らんで見る者にのしかかってくるようであった。改めて見ると、使われている色はほとんどが中間色の穏やかなものであるし、タッチもルノアールやセザンヌのようにはっきりとしたものはない。でもだからこそ、だからこそ、見る者はこの教会の荘厳さに心打たれ、敬虔な気持ちになるのだ。この絵についてはなかなか図版では分からないところがあるので、機会があったらぜひ実物の前に立ってみてほしい。

ロワン川の平船

これも個人像。残念ながら誰が持っているのか分からない。先の「モレの教会 夕刻」のさらに2年後、1896年の作である。この絵はのちに出てくるアルベール・マルケを思わせるな・・・大ぶりの平筆でスカッ,スカッと引かれたタッチがじつに気持ちいい。画面全体を覆う色彩やタッチにはてらいといったものが一切ない。33.5×41.5㎝、F6号くらいの小品である。欲しい・・・是非買えないだろうか・・・無理だろうな。ちなみにシスレーはこの3年後、喉頭がんのために亡くなっている。最晩年の作だ。

サン・マメス

これはうれしいことに日本にあるのだ。ひろしま美術館が持っている。1885年、シスレー46歳の作である。サン・マメスはモレのすぐ近く、セーヌ川とロワン川が合流するところにある。54.5×73.0㎝、日本でいうとP20号であるから、屋外で描くのには一番気持ちの良いサイズである。本当に屋外で描いたかどうかは分からないが、わたしは屋外で描いたと思う。なぜなら画面右手の岸辺や川面、空のタッチを見てほしい。刻々と移り行く目の前の風景に、自分の筆さばきにある種もどかしさを感じながらも、猛然と筆を動かしているのが分かるではないか。絵とは不思議なものだ。シスレーがこう描いてくれたおかげで、わたしたちはあたかも120年前のフランスの小村に立っているような気分にさせられるのである。

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