ミレイのオフィーリア

エヴァレット・ミレイはラファエル前派の代表的作家であり、三菱一号館美術館で開かれている「ラファエル前派の軌跡」展でも彼の作品にお目にかかることができる。彼の代表作としては「オフィーリア」を挙げる人が多いであろう。今回はこの絵について語っていく。

テイト・ギャラリー

ロンドンにあるテイト・ギャラリーは16世紀以降のイギリス絵画と世界の近・現代美術を集めたもので、ターナーがなんと2万点、ラファエル前派の作品が多数、ピカソのあの「泣く女」があり、デビッド・ホックニーもある。そんなテイト・ギャラリーの白眉といえるのがミレイ作「オフィーリア」なのだ。

1852年

本作がロイヤル・アカデミー展に出品されたのが1852年。ミレイは当時、若干23歳であった。その少し前、1848年、ミレイは19歳でともに絵を学んでいたハントやロセッティと「ラファエル前派」を結成した。

ラファエル前派は当時アカデミーの美術教育で主流だったラファエロの模倣に反旗を翻し、ラファエロ以前の素朴で明るく、生き生きとした表現に立ち返ろうとした。

ラファエル前派

ではこの絵のどこが「ラファエロ以前」なのか・・・これは案外語られていないことでもあるのでわたしと一緒に見ていこう。

オフィーリアは森の中にある川で溺れかかっているわけだが、その森に描き込まれたおびただしい数の植物に注目してほしい。緑の発色が素晴らしく、じつに明るい表現となっているが、これは下地に白色のものを用いているのに加え、透明度の高い絵の具を重ね塗りしているためである。ファン・アイクのゲントの祭壇画、中央パネルにやはり同じような植物群が描かれているので、ぜひ参照してほしい。

そしてまさにラファエロ以降、「森はこう描く」「人はこう描く」といったお手本が横行し、ある部分は省略され、ある部分はパターン化されたりしていたのだが、この絵にはそういうところがない。森にしろ、川にしろ、人物にしろ、まるでそれらを初めて見た人が描いたような新鮮さに満ちているのだ。

モデルは誰か

この画の主題となったオフィーリアにはモデルがいる。エリザベス・シダルという人でラファエル前派の画家にとってミューズのような存在であったという。この絵のモデルを務めたときには実際に浴槽に使ってポーズをとったという。浴槽の水はアルコールランプで温めていたというが、どこまで暖かくなったのやら・・・ポーズは4か月に及びエリザベスもさすがに風邪をひいてしまったようだ。ちなみにエリザベスはのちにロセッティの妻となった。

オフィーリアって?

オフィーリアはシェイクスピアの「ハムレット」の登場人物の一人。主人公ハムレットの恋人だったが、ハムレットに父親を殺され、気がふれて川に落ち、ついには溺死してしまう。無垢で純真な女性の象徴である。

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