ココシュカの風景画ーイチオシ2点

ココシュカの風景画、イチオシの2点を紹介する。ココシュカは人物像が良く知られているのだが、じつは風景画も素晴らしい。この2枚はわたしが肉眼で実際に見て素晴らしいと思った2枚である。機会があればぜひ実際に見ていただきたい。

見本市の塔から眺めたケルン市街

1956年、すでに晩年といってもよいころに描かれた作品である。ケルンにあるルードヴィヒ美術館所蔵。この絵を初めて見たときのことは忘れられない。1991年、6月のことであった。ライン河畔にあるユースホステルで相部屋になったアメリカ人がいた。画を描いている人で、私も絵が好きだということがわかると、じゃあ次の日、一緒に美術館に行こうということになって、大聖堂脇にあるルードヴィヒ美術館を訪れたのだ。

わたしは日本人であるということもあるのだが、貧乏性なところがあって、美術館の展示はとにかく端から丹念に見ていかないと気がすまない。ところがこのアメリカ人は、入り口からバーっと絵を見ていって気になる画のところで時折立ち止まっては、またバーっと見ていくという鑑賞スタイルだった。彼はそうして入り口から絵を見ていって、確か階段を上がった突き当たりにあるこの大きな(大きく見える ちなみに85㎝×130㎝)絵の前で立ち止まると「うん」とうなずいて、「今、俺はこの絵を見るためにここへ来たということが分かった。このあたり(といって大聖堂の上あたりのタッチをさして)がいいね。」といった。そして「俺はもうここで終わりにするよ。」といって「よい旅を」と手を差し出してきたのだ。

このときわたしはまだ20代で若いといえたが、彼の取った行動が理解できなかった。遠いアメリカからケルンまでやってきて絵を見ているというのになぜ全部を見ようとしないのか・・・だが、それから20数年を経た今ではなんとなく分かる気がする。それどころか、わたしの鑑賞スタイルは年々彼に近づいていっているようである。

さて、この「Ansicht  der Stadt Koeln von Messeturm aus」という画である。「見本市の塔から」とあるが、どうやったらこんなにうまい具合に見えるのだろう。ライン川を渡ってくる風、それが大聖堂にぶち当たって広大な空へと吹き上がっていくさまがじつに上手く表現されている。ココシュカのキャンバスに触れて擦れていく筆のタッチ、タッチとタッチが重なり合って絶妙な中間色を作り出していくさまが素晴らしい。この画はまさにケルンの肖像画であり、ケルンはこの画をずっと手放さないに違いない。

モントルーの風景

チューリッヒ美術館が持っている。90㎝×120㎝ということで、先の「見本市の塔から」とほぼ同サイズである。1947年作であるから、まだ60そこそこ・・・画家としてはまだ力がみなぎっている頃である。わたしはモントルーというところへいったことはないが、オーストリアのキッツビューエルというところに滞在しながらインスブルックやザルツブルグといったアルプス山麓の町を一ヶ月にわたって見て回った経験があり、この画が伝えようとしている空気はよく分かる。

とにかく山が高いのである。そもそも山というのは大地が盛り上がったり、削られたりしてできたものなのだが、アルプスの山というのはまるで天からぶら下がっているかのような印象を与えるのである。そして雲は山のよほど低いところに漂っている・・・人々はそれら山々の裾野にへばりつくように暮らしているのだ。その自然の雄大さ、人間の小ささというものが実によく表現されている。素晴らしい画だと思う。

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