クリムトのイチオシ風景画―見るべき3点

クリムトのイチオシ風景画を紹介しよう。クリムトと聞いて多くの人は人物画を思い浮かべるだろうが、じつは風景画は彼の全作品の4分の一を占めるのである。

公園

1910年作。ニューヨークのMoMAが持っている。クリムトは正方形の画面を好んだ。110㎝×110㎝の画面、上部のじつに9割がたを木の葉が占めている。黄や黄緑、緑の斑点がびっしりと描かれていて息が詰まるようである・・・この辺りは現代美術作品といわれても全く不思議はない。まさに時代を先取りした素晴らしいセンスである。画面下方の一割でこれが木立を描いたものだとようやく分かるのであるが、この割合がまた憎い・・・ニューヨークに行ったらぜひご覧あれ。

ブナの林Ⅰ

「ブナの林」はBuchenwaldブッヘンヴァルトといった方がしっくりくるだろう。1902年作。ドレスデンの近代絵画館が持っている。この絵を初めて見たとき、思わず私は「分かる!分かる!」と叫んでしまった。ブナでなくとも秋口の林を渉猟した経験をお持ちなら、この絵の見え方はじつに納得できるのではないだろうか。ブナの白い斑の幹は、枯れて地面に堆積した落ち葉の中に完全に埋没してしまっている。黄やセピア、水色の斑点がじつに美しい・・・そして木立と落ち葉の間からチラリ、チラリとのぞく空き地の青や黄の憎いこと・・・

ドレスデンは「エルベ川のフィレンツェ」と言われ、ドレスデン美術館にはジョルジョーネの「眠れるヴィーナス」やラファエロの「サンシストの聖母」、フェルメールの「手紙を読む女」がある。ドイツに行ったらぜひ訪れたい町の一つである。

けしの野

1907年作。ウィーン、オーストリア絵画館にある。モネのけしの画と見比べてほしい。クリムトは「分離派」を謳って、旧態依然としたウィーンの主流派から決別し、当時最先端を行っていたフランスやイギリスの絵画に倣ったわけだが、この絵などは印象派よりもかなり進んでおり、赤や黄、水色や黄緑の斑点はジャポニズムの影響を伺わせる。ボナールやヴュイヤールの絵を思わせもするな・・・

ちなみにオーストリア美術館にはあの「接吻」(1907年~1908年)があり、「ユディトⅠ」(1901年)があり、「アデーレ・ブロッホ・バウアーの肖像Ⅰ」(1907年)がある。クリムトファンにはたまらない聖地である。ここにはまたエゴン・シーレやオスカー・ココシュカ、ムンクやホードラーがあり、世紀末美術を堪能したい向きにはお勧めの場所である。

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