ドイツの画家アルブレヒト・ デューラー の作品を鑑賞するにあたって、わたしのイチオシ作品4点をお伝えしよう。
野兎
じつはデューラーは水彩画が素晴らしい。いろいろなところが持っているが、わたしはウィーンのアルベルティーナが持っているこの一枚を推したい。1502年というからデューラー31歳の時の作である。じつに誠実に、丹念に見て描いている。500年以上たって、いろいろなメディアに晒されたわれわれの目では、もはやこのように見るのは不可能であろう。じつに「見る喜び」というものが伝わってくるような画だ。
ちなみにアルベルティーナはウィーンのリンクの中にあり、交通の便は良い。そしてなんと、9月20日からデューラーの展示があるという。もちろんこの「野兎」も出るので、ウィーンに行かれる方はこの機会にぜひご覧になるとよい。
1500年の自画像

ミュンヘンはアルテ・ピナコテークにある傑作である。デューラーという人は自意識の強い人で、そういう意味では近代の人だったといえるのであろうが、多くの自画像を残している。この30歳になろうとする自画像はその中でもピカイチの作品である。
髪の毛の描写を見てほしい。彼の父親は金細工師だった。どんな芸術家であっても、その氏素性からは逃れられないというのが私の持論だが、彼がどれほどイタリアへ旅し、近代的な人体比例や遠近法を学んでも、故郷ニュルンベルグの金細工師たる父親の影響は払拭しえないのである。
ちなみに手の描写もお見逃しなく。じつに美しい手である。
アダム イブ
マドリードのプラド美術館にある一対である。発注者は不明で、あるいはデューラー自身の自発的な制作ではないかとも言われている。だとすると、デューラーは人体比例に関しては、現代的な美的センスを持っていたというべきであろう。後に出てくるルーベンスやアングルに登場する女性の肉体美とは明らかに異なるものがここにはある。じつにフレッシュな作品である。まさに人類の最初の男と女である。
四人の使徒
鉄板中の鉄板だが、良い絵なのだから仕方なかろう。これもミュンヘン、アルテ・ピナコテークにある。1526年、デューラー55歳、死の2年前の作品である。使徒の衣服の描写を見てほしい。これはもはや衣服であって衣服ではないな・・・絵の下部に施された銘文がまたふるっている。
「世のすべての支配者たちよ、この危うきときにあたり、人の惑わしを神の御言葉ととらざるよう、慎みて意を用いよ」
これは当時のカトリック教会にあてたともいわれているが、わたしはむしろ、全人類にあてた言葉だととらえたい。
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