ボスのイチオシ3枚

ヒエロニムス・ボスのイチオシ作品3点を紹介する。併せて、どこで見られるのか、どういったところを見たら良いのかについてもお伝えする。

聖アントニウスの誘惑

わたしのイチオシはまず何といってもリスボン国立古代美術館にある「聖アントニウスの誘惑」である。1500年~1501年というからボスが50代、円熟期を迎えるころの作である。素晴らしい仕上がりである。じつは聖ヒエロニムスを主題としたボスの絵はいくつも存在するがこれがピカイチであろう。

まず、随所に散りばめられた赤―これはバーミリオンにレーキ系の透明な赤をグラッシ(掛けた)ものだが、画面の中の青や緑と響きあってじつにうつくしい。背景の業火と青空、手前の廃墟と木製のステージの明暗のバランスも見事である。そして、これだけのイメージがひしめき合っている中で、見る者の視線は画面の中をぐるぐると回って見事に中央の聖ヒエロニムスに帰ってくる。このあたりはミケランジェロの「最後の審判」にも匹敵する。

ちなみにこの絵は三連祭壇画であり、右翼と左翼がある。その右翼パネルにはなんとボスの自画像が描き込まれている。聖アントニウスを助ける3人の修道士のうちの一人である。

聖アントニウスの誘惑

もう一点、同じ主題の傑作を紹介する。こちらはマドリードのプラド美術館にある。スペインがかつてヨーロッパでもっとも強大だった時期、国王はフェリペ2世であったが、彼は自分の居城であるエル・エスコリアル宮殿を飾るためにボスの作品を買い求めた。それで現在でもボスの作品の多くはスペインにある。

リスボンにある「聖アントニウスの誘惑」に比べ、こちらは黄金色の草地が一面に広がる明るい田園風景である。だが、この明るさが怖い。真の狂気とは影がないほどに煌々と照らされた世界にこそ存在するのではないか・・・画面下部中央の聖ヒエロニムスの表情は素晴らしい。かれはいったいなにを見詰めているのだろうか

1505年~1516年、ボス最晩年の作品である。

最後の審判

1510年、ボスが還暦を迎えるころに注文されたものである。注文したのは時のネーデルランド君主、ブルゴーニュ公フィリップ美男公である。現在はウィーンの造形美術アカデミーにある。

この絵を、20世紀のシュールレアリストによって描かれたものだといわれて、信じてしまう人は結構いるのではないだろうか。それほど現代的な絵である。いったいボスという人はこうしたイメージをどこから持ってきたのであろうか。一説にはゴシックの柱頭装飾や写本の類に描かれた中世のイメージを捉えなおしたといわれているが、それだけでは足りない。時空にゆがみが生じて、彼だけ人類の未来を見てきてしまった・・・あるいは彼は宇宙人であり、彼の描くイメージは地球上ではない、どこか異星のものなのではないか・・・そんな空想をしてしまうほど彼の画は不可思議である。

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