もっと初期フランドル絵画―あなたの知らないスゴイ人

ファン・アイクの周りには、まだまだあなたの知らないスゴイ人がいる。

この頃の人たちは、絵を描くことを完全に職業の一つととらえていたのであり、絵が描けるようになるまでには皆、現在では考えられないくらい長い修業をした。加えて、オリジナリティとか知的所有権という発想もないところで、かなりの図案や技術、アイデアが自由に流通していたのである。

それで、この初期フランドル絵画においても、親方と呼ばれる人たちの作品には一定のレベル以上のものがそろっているわけだ。よく見ていくと、ファン・アイクレベルの画家が何人かいる。

もっと初期フランドル絵画を見たいと思っているあなたに・・・今回は二人の画家を紹介する。

カンパン

まずはロベール・カンパンである。ゲントの南にあるトゥルネという町の画家組合で代表を務めていた。代表作はフランクフルトにあるシュテーデル美術館が所蔵する「聖母子」とロンドン・ナショナル・ギャラリーが所蔵する「夫妻の肖像」である。

前者は聖母の指先や衣装、背景の赤い布地に顕著なように、描写の点ではファン・アイクに劣らず克明に、緻密に行われている。ただ、人物の動き、たたずまいにぎこちなさがあり、後期ゴシックの匂いを濃厚に残した作品だといえる。ただ、これは時代性にばかり帰される性質のものではなく、カンパンがファン・アイクよりも、より画面における絵画性に重点を置いた結果だともいえるように思う。

一方、後者だが、これは素晴らしいの一言に尽きる・・・とくに奥方のかぶっている頭巾を見よ。もう手に取って持ち上げられそうではないか・・・頭頂部に留められているピンも効果的だ。そして人物そのものの内面性・・・この辺りはひょっとしたらファン・アイクを上回っているのではあるまいか。

そういう意味ではカンパンはファン・アイクよりもむしろホルバインに結び付けて考える画家かもしれない。

ロヒール・ファン・デル・ウェイデン

ウェイデンはカンパンの弟子である。ブリュッセルで活躍したという。

この人の代表作は「ボーヌ祭壇画」(1445年~1450年 ボーヌ)であろう。まず、この色!600年近く立っているのである!これはファン・アイク同様、乾性油に琥珀か何かが混ぜられているのではないだろうか。開翼時中央パネルの背景になっている黄金の雲の色も素晴らしいが、中央に立って天秤を持っている大天使ミカエルもまた生々しくて素晴らしい・・・この人の絵はファン・アイクよりも劇的で物語性に富んでいるな・・・

閉翼時には中央パネルにグリザイユ(モノクロ表現)の彫像が現れるが、聖セバスティアヌスと聖アントニウスのどちらも大変セクシーに描かれている。

ちなみにボーヌとはフランス東部の町でディジョンの近くである。祭壇画が飾られているボーヌ施療院を創設したのはブルゴーニュ公国の宰相二コラ・ロラン・・・そう、あのファン・アイクの「宰相ロランの聖母」の二コラ・ロランである。

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