癒しの水―幸せの水空間3点

水というのは人に癒しを与えるのだろう。水は古来より様々な絵画に登場してきた。だが、水は無色透明、光を通すと同時に光を反射し、どんな形にもなれば、どんな形でもあり得ない。常に動きとどまることを知らない・・・これほど頻繁に登場するのに、これほど厄介で難しいものもない。いろいろな人がいろいろな方法で水の表現を試みてきた。そんな中でとびきりのものを紹介しよう。幸せの水空間、3点である。

ペリソワール(1877年 ワシントン・ナショナルギャラリー)

カイユボットという画家をご存じだろうか。ご存じなけば、ぜひ記憶にとどめておいていただきたい。素晴らしい画家なのである。

1848年生まれであるから、セザンヌより一回り下の世代である。裕福な織物業者の子としてパリに生まれ、学校では法律を修めたインテリであった。だが、絵が好きだったのであろう。エコール・デ・ボザールに入学し、やがて印象派の画家たちと交流を持つようになる。

そんな彼のなんと29歳の時の作品である。ペリソワールとは底の平らな一人乗りのカヌーのことである。それにしても、カヌーの舳先に押されてドローンとたわんだ水の表現を見てほしい。このイエローのなんとまぶしいこと・・・あたかも自分が初夏のパリ郊外で水遊びを楽しんでいるような錯覚にとらわれるではないか。

泉(1856年 オルセー美術館)

言わずと知れたアングルの名品であるが、驚くなかれ、この作品はルーブルではなく、オルセーにあるのだ。「トルコ風呂」や「ヴァルパンソンの浴女」がルーブルにあるのに、なぜ「泉」はオルセーにあるのだろうか。

まあ、それはおいておくとして、この絵を初めて目にしたときの衝撃をわたしは忘れることができない。一糸もまとわぬ女性の裸身もさることながら、その女性が手にした壺から流れ落ちる水の表現のリアルなこと・・・おおよそ、水というものが青や水色の絵の具、表面に刻まれる皺、衣文といったもので表現されることしか知らなかった身には驚きであったのだ。

ちなみにアングルは水だけではなく、サテンやビロード、綿毛といった質感表現についても卓越しているので、ぜひいろいろな絵を見てほしい。

保津川図(1795年 株式会社千總)

重要文化財なので、図版では知っておられる方も多いであろうが、ぜひ実物を見ていただきたい。屏風なので、展示されるときには折って立てられる。その折った状況を想定して本図は描かれているわけなので、ぜひとも実物を見る必要があるわけだ。

本図を描いたのは円山応挙だが、鎖国していた当時の日本人としては、可能なかぎり、すべての技法を駆使して写実に迫ったといえるのではないだろうか。それゆえに、川の流れ、水しぶきなど、それ自体の表現には限界も見えるが、全体として、この絵に対峙したときに聞こえる川の音、水のにおい、肌に感じるマイナスイオンはじつに真に迫ったものがある。

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