三菱一号館美術館で開催中の「フィリップス・コレクション展」のオススメ作品を紹介する。会期終了まであと残り僅かということから、会場はかなりの混雑が予想される。見るべき作品を絞って充実した時間をお過ごしいただきたい。

何度でも繰り返し見たい作品
フィリップス・コレクション展、じつは2005年に森アーツセンターギャラリーに来ている。この時来ていた作品と今回来ている作品はじつは多くが重なっている。どういう事情によるのだろうか・・・その辺はわたしには知る由もないが、たとえ14年前に見ていても、もう一度見たい作品は当然あるのであり、その中から私のオススメをいくつか紹介しよう。
★コロー「ジェンザーノの眺め」(1843年)
黄色く乾いたイタリアの土がはっとするほど美しい
★シスレー「ルーヴシエンヌの雪」(1874年)
すべての音が雪に吸い込まれて、雪を踏みしめる自分の足音だけが身体の内側に聞こえてくるような・・・そんな雪の日の情景がとてもよく表現されている。この絵はわたしは欲しいな・・・
★ボナール「棕櫚の木」(1926年)
真夏に地中海沿岸を旅したことのある方なら、この絵が運んでくる空気―その温度や湿り気、匂いといったものまでが理解できるのではないだろうか。ボナールを見出したダンカン・フィリップスは偉い。
★ゴーガン「ハム」(1889年)
あまり認めたくないのだが、描いたものが自然に「絵になる」人がいる。ゴーガンもそうしたうちの一人だ。悔しいがなんとも良い絵だ・・・
前回はなかった作品でぜひ見ておきたい作品
★ボナール「犬を抱く女」(1922年)
言わずと知れたボナールのミューズ、マルトである。だが、この絵のマルトはわたしが見た中でも一番初々しく、瑞々しい・・・
★クレー「養樹園」(1929年)
今世紀初頭にアメリカ東海岸のイェール大学で学を修めたような人が、良くこの絵を買ったものだ。ダンカン・フィリップスという人がただのインテリではないことがよくわかる。
★ココシュカ「クールマイヨールとダン・デ・ジュリアン」(1927年)
ココシュカという人の真骨頂は風景画にあると私は見ている。ケルンのルードヴィッヒ美術館にある大聖堂を描いた作品を始めてみたときのことをわたしは忘れない。上に天があり、下に地があり、ここに見る者がいる・・・そんな、当たり前でいながら感動的なことをわれわれの前に差し出して見せてくれるのがココシュカである。この絵も素晴らしい・・・
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