エルンストのイチオシ3点


マックス・エルンストのイチオシ作品3点を紹介しよう。

ケルン近郊に生まれ、ボンで学んだエルンストは第一次世界大戦への従軍を経てフランスにわたりシュールレアリスムに参加。ここでフロッタージュやデカルコマニーなど、彼の作品の代名詞となるような技法を始めるのだが、彼の作品が絵画として真に垢抜けてくるのはアメリカへの渡航以後のことである。

聖アントワーヌの誘惑

では実際に作品を見ていこう。まず一番に推すのが「聖アントワーヌの誘惑」(1945年 デュイスブルグ ヴィルヘルム・レームブルック美術館)である。随所に残ったデカルコマニーの跡から想像するに、何層かのデカルコマニーで下地を作った後で、浮かび上がってきた様々なイメージをエルンストが描き起こしていったのであろう。

だが、ここでは描き起こしていったあまり、当初に行ったデカルコマニーの跡は全体の一割といったところであろう。シュールレアリスムの技法は描き手の深層心理を画布の上に浮かび上がらせる。ここで興味深いのは、フランス、アメリカとインターナショナルな活動を通して、浮かび上がってきたのはドイツ人たるエルンストの森や妖精といったものに対するイメージだったということだ。聖アントワーヌにまとわりつくおびただしい数の怪物はヒエロニムス・ボッスやブリューゲルなど、後期ゴシックから北方ルネサンスにかけての絵画を思い起こさせる。

エルンストに怒られるかもしれないが、森や湖の緑、聖アントワーヌの衣装の赤がとてもきれいだ・・・

雨後のヨーロッパ

1940年に着手されアメリカ渡航後に完成された作品ハートフォードのワズワース美術館にある。

ダリの「内乱の予感」もそうだが、絵画はときに時代の感覚を鋭敏に映し出す。すでにドイツ軍はポーランドへ侵攻しており、ヨーロッパは再び混迷の時代に突入していくわけだが、1944年のベルリン陥落時のヨーロッパを、この絵は早くも映し出しているかのようだ。

デカルコマニーによって作り出された黄や赤、緑のイメージが何とも不気味で美しい。

わたしが注目したいのは、この絵がヨーロッパで制作されたにもかかわらず、アメリカで陽の目を見たことである。エルンストの作品を見ていくと、ドイツ~フランス時代の作品は、ダダやシュールといった「イズム」臭が強いように思う。ダダやシュールが標的とする文化・文明や人間の理性といったものを意識しすぎているように見えるのだ。アメリカという国にわたり、そうしたものに対する過度の意識が薄れ、絵画としての良さが前面に出てきているように思う。

王妃とチェスをする王

ニューヨーク近代美術館所蔵。1944年作だ。エルンストは彫刻も作る。ジブリのアニメに出てきそうな不思議な、そしてユーモラスなフィギュアである。

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