エルンストを考える三つの言葉

エルンストを考える上で重要な言葉は三つである。一つ目はダダイズム、次にシュールレアリスム、そしてアメリカである。今回はこのうちのダダイムズとシュールレアリスムについて語っていこう。

ダダイズム

第一次大戦が当時のヨーロッパの人々に及ぼした影響について、今日の日本人が想像するのはちょっと難しいかもしれない。そこで、われわれ日本人は先の戦争について思いを巡らせてみよう。われわれの祖父母や大叔父、大叔母が経験したこと・・・満州で、シベリアで、南太平洋で、広島で、長崎で、東京で起きたことについて、日本人ならば多かれ少なかれ聞き知っているはずだ。そしてそれらが当時の日本人、それからの日本人についてどのような影響を及ぼしたか・・・

それらが起きる以前とその後は、もはや同じ時間軸ではつながらないはずだ。今まで聞いたこと、見たこと、行ってきたこと、すべてはこれから見ること、聞くこと、行うことに何らの影響も及ぼさないであろう。すべては信じるに値しない・・・

そうした気分が先の戦争のあと、しばらく日本人を支配したし、美術の世界でも大きな影響を及ぼしたのだ。破壊のための破壊―破壊そのものを目的とした芸術運動が敗戦後の日本にいくつも現れるのはこうしたところに理由がある。

同じことがヨーロッパでも起こったと考えてみよう。当時、ヨーロッパのあらゆる国を舞台にあらゆる手段で殺戮が繰り広げられた。そうした時、中立を守っていたスイスのチューリヒでダダは生まれ、瞬く間にベルリンやケルン、パリに飛び火していくのである。

シュールレアリスム

さて、ダダイムズは第一次世界大戦までのヨーロッパが作り上げてきた文明というものを標的にし、それを破壊することを眼目にしてきたわけだが、やがてある人々は文明の下にもっと厄介なものが潜んでいることに気づく。それは「人間の理性」信仰というものものであった。

近代において人間のプライドに打撃を与えたものとして三つのものが挙げられる。第一はコペルニクスの地動説。人間は宇宙の中心ではなく、宇宙に伴って動く、文字通り宇宙の一部となった。二番目がダーウィンの進化論。人間は創造主が作りたもうたものではなく、サルから進化したものとなった。そして第三の打撃がここで述べるフロイトの無意識の心理学である。

理性というものは人間の心の働きのほんの一部であり、意識の下に潜んでいるものこそが人間の行動を決定するのだ。

ヨーロッパを作り上げてきた文明が問題なのではなく、文明を下支えする人間の理性そのものが問題なのであるとするこの考えは1924年にフランスで生まれたが、燎原の火のようにヨーロッパ全土へ、そして日本へも広がった。

人間の意識、理性を超えていこうとするシュールレアリスムは、その後あらゆる技法となって現在までもコンテンポラリーアートい影響を及ぼしている。

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