アングルのイチオシーすてきなコレ3枚。

 

アングルのイチオシ作品を紹介する。アングルは生前から人気が高く、おびただしい数の作品が残されており、来日しているものも少なくないのだが、今回はそのなかからコレというすてきな作品を3点ピックアップしてみた。

ドーソンヴィル婦人

アングルはローマ賞という、18世紀末のフランスで画家を志す者にとっては登竜門となる賞を得てイタリアに留学し、そのまま44歳までイタリアにとどまった。つまり、歴史や神話に対する志向があり、じっさいそうした絵が多いのだが、彼の絵を見ていくと、生活のために注文を受けて描いた肖像画、それも女性像が断然素晴らしいのである。

そんな女性像の中でもピカイチはニューヨーク、フリック・コレクションにある「ドーソンヴィル婦人」(1845年)であろう。

アングルは手跡を残すことを嫌い、その画面は鏡のように滑らかな仕上がりとなっている。そのせいか、図版で見るときはともかく、実物と対面すると、ややもすると平板で弱々しい印象を受けがちなのであるが、この作品は全く違う。

まさにこの絵自体が一枚の鏡で、中にじっさいにドーソンヴィル婦人が潜んでいるのではないかと思うくらい、この絵はリアルであり、ドーソンヴィル婦人のまなざしは見るものを突き刺すのである。

衣装の描写は素晴らしく、両手の表情、配置は絶妙である。ちなみにこの両手については美しいデッサンが残されている。

ブロイ公妃

続いてはメトロポリタン美術館にある「ブロイ公妃」である。ニューヨークというところはほんとうに富の集まるところなのだな・・・

とにかく、この青の美しさはどうであろう・・・わたしが見てきた限り、これほど絵の具を美しく発色させるのは15世紀フランドルのヤン・ファン・アイクだけである。

アングルをはじめ、新古典主義の画家は、まず白黒のモノクロームで描いた後、透明感を出した絵の具を上からかけて彩色をした。つまり、絵の具の粒子は油の中で固着されるため、光が当たると透明に輝くというわけだ。

ブロイ公妃のまなざしはアンニュイで良いな・・・彼女のポーズ、腰のひねりも魅力的だ。

ルブラン婦人

またしてもメトロポリタン美術館所蔵の作品。フランス人は「泉」や「トルコ風呂」などの生硬な作品は大事に国内にとっておいて、こんな素晴らしいものを国外に放出してしまったのか・・・

まあ、このルブラン婦人の透き通るような肌を見てほしい。女性の美しさを何かと若さに求めるひとがいるが、成熟の美しさはなんたるかをアングルも19世紀のフランス人も知っていたようだ。

両手の配置とその表情・・・手は、じつはデッサンとしては最高難度を誇るものであり、これだけの表現ができるアングルは名手の名にふさわしい。

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