「斉白石」展を見るコツ

上野の東京国立博物館で開かれている「斉白石」展を見るコツをお教えしよう。この展覧会は、東洋館4階フロアのうち、2室だけを用いたもので、それほど広くはなく、また人もまばらなので見るのに時間はかからないが、斉白石の代表作がずらり・・・と並んでいるわけではないので、どこをどう見たらよいのか、指針が必要であると思う。それで、今回はその指針を示しておきたいと思う。

イチオシは虫のスケッチ

イチオシは「工虫画冊」。中でも第五図:霊芝と草葉、天牛虫である。1949年、中華人民共和国が成立した年の作品である。大ぶりな霊芝が滲んだ赤でゆったりと描かれている。そこから伸びている草葉が濃墨で描かれているのだが、その描線のじつに抑揚に富んで豊かなこと・・・いったいいくつから書を始めてこれほど豊かな線が引けるようになるものであろうか・・・1864年生まれの斉白石はこの年、じつに85歳。すごいな・・・中国の画家の生涯をたどっていくと、長生きというものが良いものであると素直に感じられる。

「熊蜂図」もいい。秋田蘭画に通じるものがあるな・・・デューラーの水彩画を思わせもする。いったい人には、小さいもの、細かいものに対する愛情とか興味というものがあって、このひともごく素直に、しかも晩年までそうした気持ちを持ち続けたようだ。

線に注目

続いては「松鷹図」である。これも線が見事である。松の木肌がじつに無造作に、だがこれ以上はないほど松の木肌として描かれている・・・すばらしい!そして松の葉。触るとちくっとしそうな、ザッツ松葉なのである。極めつけはやはり鷹・・・東洋画の不思議なところだが、陰影とか遠近法とか、そういうものを超越したところで鷹の筋肉とか生命力とか、そういうものがどうして表現できるのであろうか。あるいはこれは絵画の不思議というべきなのかもしれないが・・・

字が素晴らしい

これも東洋画の特色の一つだが、絵筆に毛筆を用いていることもあり、画と書は分かちがたく結びついている。特に年齢を重ねた人の絵の場合、それは如実に現れる。日本でいえば富岡鉄斎の絵などがそうだ。

斉白石の場合もそれは言えて、画中に書き入れられた賛や詩がじつに味わい深い。大人の・・・年齢を重ねないと分からない字である。

「篆書馬文忠公語」という書のみの作品がある1937年作。白石73歳の書である。わたしは73になったらこのような書が書けるであろうか・・・これほどおおらかに、てらいなく、ユーモラスに世界を捉えられたらどんなに素晴らしいであろう。ちなみにこの作品は印にも注目してほしい。白石は篆刻家でもあったというが、この印はなるほど、素晴らしい。たとえば、日本人でも魯山人の篆刻などは素敵だが、白石のものを見た後で眺めると、どこか作為があって嫌味に感じてしまうほどである。それほど白石の篆刻は自然で素直なのである。

2 件のコメント

  • 斎白石は何歳まで絵画を描いていたのですか?95歳の亡くなる前まで描けていたのでしょうか?贋作がかなり多いですよね、本人作と贋作の見分け方はありませんか?

    • お返事が遅くなってすみません。私の手元にある資料では1952年作のものまでです。つまり、死の5年前ですね。贋作の見分け方ですが、わたしは真贋の問題よりも、その絵からどれだけのものを自分が受け取れるかということを問題にします。贋作にも真作にも良いものがあります。それでもあえて言うなら、真贋の差は作品の「鮮度」でしょう。対象をいかに新鮮な目で捉えるか、何枚描くにせよ、いかに最初の一枚目に戻れるかが真作では大事になってきます。「一枚目」なら真作と思って作業を進めるのが良いのではないでしょうか。このへんは長くなりますのでブログに書くことにします。

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