ステキな李朝作家を紹介しよう

 

鄭敾。チョン・ソンと読む。もし、現代美術をやっていなければ、こんなステキな作家には巡り合えなかったろう・・・

そもそも隣の国なのだから当然なのかもしれないが、わたしの学生時代、東京で現代美術系のギャラリーを回っていると、しばしば韓国作家の作品を目にしたものだった。大学の頃、わたしが取っていたゼミの教授は韓国の人だったし、アトリエには韓国の留学生も出入りしていた。

そんなわけで、もともと韓国には親近感を持っていたのだが、日本の室町から安土桃山、江戸に至る近世の絵画を勉強するに至って、はじめて李朝の絵画にも目を向けたわけだ。

そこで「おっ、この人はやるな・・・」と思ったのが鄭敾なのであった。だが、この鄭敾、見たこともない漢字2文字の上、併記されているのがハングルなので、わたしも困ったのだが、別の展覧会でも、やはりこの人のものがずば抜けて良いのであった。それで、とうとう観念して調べることにしたのだった。

どんな人か

鄭敾はソウルの人。1676年というから日本でいえば尾形光琳や乾山とほぼ同時代の人といえる。士大夫、つまりは貴族階級に属する人であったが、彼が生まれるずいぶん前から一門は没落しかかっていた。彼を引っ張ってくれる人が現れて官吏の職に就く40歳くらいまでの間、彼は夜警などをして生活していたという。その後は昇進を重ね、死の3年前にあたる1656年には従二品にまで昇進したという。李氏朝鮮の官職は正一品から従六品までであったから、まずまずの官僚人生だったのではないだろうか。易学に通じ、書物を表すほどだったという。また朱子学の熱心な信奉者でもあった。

どんな絵を描くのか

端的に言うと、墨一色で描かれた水墨画がメインである。ただ、その筆のてらいのないこと・・・・一体に、中国のものにしろ、韓国のものにしろ、文人の描くものというのは絵を売ろうとするいやらしさがなく、見ていて清々しいものなのだが、鄭敾のものはまた特別である。なんと寂しく、穏やかで、そして暖かいのであろう・・・こんな比喩をほかの絵画で使うことはない・・・彼は真景、つまり実際の韓国の風景を描いているといわれる。なるほど、だから柔らかで、心に沁みるのである。

どこで見るか

東京国立博物館、大和文華館にもあるが、やはり現地で見るべきであろう。韓国国立中央博物館には私の大好きな「蘆山瀑図」がある。巨大な建物なので、貧乏症を起こして端から順に見ていくなどということはせず、あらかじめ見たいものを絞り込んでから訪れるべきである。でないと三分の一も見ないうちに疲れ果ててしまうであろう。ソウルにはまた潤松美術館というところがあって、かなり良いものを持っているのだが、残念ながら一年のうち、限られた期間しか開館していない。ソウルといえば徳寿宮の敷地に現代美術館があり、鄭敾の作品をかなり置いているようである。

どこで見るにせよ、東洋画なので、公開される期間に気を付けて見に行ってほしい。

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