わたしのイチオシ スゴイ中国絵画

 龔賢をご存知か。もしご存じなければ、今日これを読まれたあなたはじつに幸運である。龔賢はスゴイのである。わたしのイチオシ、数多ある優れた中国作家の中でも飛びぬけた個性の持ち主である。

   どんな人か

龔賢-「きょうけん」と読む。中国が「明」と呼ばれていた頃の人である。西暦では1368年~1644年がそれに当たるが、明はその末期「清」という王朝に取って代わられる。あの「日清戦争」の清である。明がその清に取って代わられる時代を生きたのが龔賢である。1619年に生まれ、1689年に没した。江蘇省の人である。中国には黄河と揚子江という大河があるが、南を流れているのが揚子江。その揚子江が海に注ぐあたりが江蘇省で、そこにある崑山というところで彼は生まれた。董其昌(とうきしょう1555-1636)という、それまでの膨大な中国絵画を渉猟して体系化した、西洋で言えばルーベンスのような人がいるのだが、その人について絵画を学んだという。明の滅亡後というから、30代後半に出家して南京に移り、南京城内の清涼山というところで隠遁生活を送った。

   どんな絵を描くのか

 これはもう、実物を見ていただくのが一番なのだが、紙に墨一色で描くいわゆる「水墨画」である。描かれているのは山や川、岩や草木なので「山水画」ともいえるであろう。ただ、その描き方が尋常ではないのである。墨-それは濃い墨であったり薄い墨であったりするのだが、筆に含んだそれが紙上の一点にポトリ、そしてサーっと浸みていく(見たわけではないが)・・・そんなことを繰り返して描かれたジョルジュ・スーラのような、岡鹿之助のような画肌なのだ。そして、描かれている山河の奇怪なこと・・・およそ東洋画の風景というのは実在しないものを描いていることが多いのだが、それにしても彼の描き出す風景は異様であり、「異界」あるいは「魔界」とまで呼んでしまいたいような世界である。ちなみに彼の山水には一人に人物も登場しない・・・

   どこで見るか

 さて、そんなすごい龔賢をどこで見るかだが、わたしのもっているリストによると、まずはニューヨーク、メトロポリタン美術館。(ここは本当に何でも持っているな・・・)そしてチューリヒはリートベルク美術館。ここには有名な「千巌万壑図」(せんがんばんがくず 1670年頃)がある。

 そして、そして・・・うれしいことに東京にもあるのだ。泉屋博古館という美術館をご存知か。これは、4000点にものぼるという住友家伝来の美術品を公開するために1960年に設立されたという美術館である。京都は鹿ヶ谷に本館があるのだが、2002年に東京、六本木にも分館ができた。ぜひ、いちど足を運んで見られよ。東京メトロ南北線の六本木一丁目から行くと、近未来的ともいうべきガラスやスチールの建物を眺めながらエスカレーターを上がっていくと、急に桜やかえでの木立が現れ、その奥に瀟洒な建物が見えてくる。それが泉屋博古館だ。

 ただ、東洋画の宿命から、常設というわけには行かないので、ホームページ等で展示をチェックしておくとよいだろう。

http://www.sen-oku.or.jp/tokyo/

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