あなたが知らないであろう素敵な画家を紹介しよう。
上野の森美術館でフェルメール展が開催されている。世界中に40点もないフェルメール作品のうち、なんと9点が来日するということだ。日本に住んでいて良かった・・・と思うのもつかの間、展覧会場がどんな有様になっているのかは想像に難くない。
9点のフェルメールにはきちんと正対できるのか・・・「牛乳を注ぐ女」にはそもそも近づけるのか・・・それどころか会場へもすんなりと入れるのだろうか・・・
そんなことが心配なあなたへ・・・フェルメールに負けず劣らず、素敵な作品を物している作家がいるのだ。
ピーテル・デ・ホーホ
気づいている方もおられるであろうが、フェルメールはここ10年ほどで結構な回数来日しているのだ。その証拠に今回来日している9点のうち、日本初公開となるものは3点にすぎない。
ということは、フェルメールと同時に17世紀オランダの風俗画も、そこそこ来日してきているということだ。そうした中で、フェルメールに匹敵するだけのオーラを発している作家を、数年前の「フェルメールからのラブレター展」で、わたしは発見してしまった。
ピーテル・デ・ホーホ(Pieter de Hooch 1629-83/84)である。ホーホはロッテルダム生まれ。フェルメールと同時代にデルフトで活躍し、後にアムステルダムに移った。1660年というから、30歳くらいまでの間にフェルメールと画の腕を競い合うようなことをしていたらしい。どおりで・・・わたしが見た作品の中で優れた三つを紹介しよう。
中庭にいる女と子供 1658-60
ワシントン・ナショナル。ギャラリー所蔵のものだ。中庭の黄、背景の木立の緑、そして女のスカートの赤が素晴らしい。
室内の女と子供 1658
床の格子縞を見られよ。ベルリンにあるフェルメール作「紳士とぶどう酒を飲む婦人」の床と同じではないか・・・そしてここでも女のスカートの青、衣装の赤、床の黄の取り合わせが美しい。
デルフトの中庭 1658-60
人物の背景にあたるレンガの建物の描写がフェルメールそっくりである。また、ビールジョッキを傾けている女性のスカートに注目して欲しい。その発色の素晴らしいこと!おそらくこれは高価な顔料であるバーミリオンで描いた上からレーキ系の透明色でグラッシをかけている。そして、画全体を覆う曇天のメランコリックな、不気味な光・・・ただ、ホーホの描く人物には、こころなしか温かみのようなものがあり、そこがかすかにフェルメールとは異なるところである。
ホーホを見られよ
展覧会ホームページを見ると、今回も何点かホーホが来日しているようだ。フェルメールに近づけなかったら、ぜひその間にみんなの知らないごちそう「ホーホ」をゆっくりと堪能して欲しい。
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