最高のルーベンスを見る喜び

 

 最高のルーベンスを見る・・・お前は何を言っているのだ?最高のルーベンス?それは『マリー・ド・メディシスの生涯』のことを言っているのか?つまりはルーブルに行けとでも?というような声が聞こえてきそうだが、わたしの言いたいのはこうだ。

 ルーベンスは売れっ子であった。それも超の付くほどの・・・彼の作品を求める人は当時の西ヨーロッパでは無数に居り、それらの注文に応じるために、彼は仕事を分業せざるを得なかったのである。彼の工房にはそれこそ無数の弟子や職人、協力者がいたから、彼は下絵を描いた後は、これらの人たちに途中の仕事を任せ、最後の仕上げで手を入れるくらいだったのである。これは当時としては別に珍しいことではなく、むしろヨーロッパの親方制度の下では普通のことだといってよい。ただ、それにしてもルーベンスにくる注文は多すぎたのだ。

 それゆえ、現在、ある程度の規模を持つ美術館には、ルーベンスの絵が一点は置いてある。それで必然的に彼の絵を目にする機会も多いのだが、多く見ていくと、あきらかに絵のテンションが一段も二段もひくいものに出くわすことになる。ルーベンス作だからといって、安心して見られない訳だ・・・

 そこで、最高のルーベンスを見る方法というものが必要になってくる訳だ。

家族を描いたものを見るべし

 上に書いた事情から、歴史画や宗教画などの大作には、途中で多くの弟子が関わっていることが考えられる。それで、その対極を考えればいいわけだ。それは彼が自分のために描いた絵、すなわち家族を描いたものは彼の筆が多く含まれていることが考えられる。

下絵や小品、エスキースを見るべし

 いくらルーベンスが多忙とはいえ、ルーベンスブランドを守ろうとすれば、どういった絵にするかという構想を示した下絵やエスキースはルーベンス自身が制作する必要がある。それで、逆に下絵やエスキースなどの小品を見ていくことで、最高のルーベンスに出会えるというわけである。たとえば、西洋美術館自身が所蔵している「眠る二人の子供」などは間違いなく100%ルーベンス自身の筆になるもので、すばらしい作品である。松方氏はじつにいい買い物をしたと思う。

美術史美術館、アルテピナコテークに行くべし

 それでもやっぱりルーベンスだもの・・・大きいのが見たい!歴史画見たい!宗教画見たい!肖像画見たい!というあなた・・・

ずばり、2000点はあろうかというルーベンス作品の中でもスター級のものばかりを集めている美術館がある。

ルーベンスが生きていたころにヨーロッパで絶大な影響力を持っていたのはハプスブルク家である。それで必然、良いものは彼らのサロンに集まることになる。というわけで、スターばかり集めたレアルマドリードのようなルーブル美術館は置いておくとして、ひとつはドイツ、ミュンヘンにあるアルテピナコテーク、もう一つはウィーンの美術史美術館へ行くとよいであろう。

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