いるだけで幸せな気分になれるー私のイチオシ

 

理屈は抜きにして、とにかくそこにいるだけで幸せな気分を味わえる・・・美術を愛するものとして、ある程度、鑑賞体験を積むと、そうした場所の2つや3つは出てくるものだ。

わたしもそうした場所を挙げていけば、キリはないのだが、今回はその中からあえて1つをあなたに紹介しよう。

ザンクトアルバン(Neu St. Alban)

 Neu St. Alban   Gilbachstrasse 25 50672 Koeln

ドイツ、ライン河畔の町ケルンにあるカトリック教会である。ケルン中央駅から10数分で着く。最寄り駅はケルン・ヴェストかクリストフ・シュトラッセになるであろう。わたしも知らなかったのだが、古い建物(Alt)と新しい建物(Neu)があるらしい。わたしが言うのは新しいほうである。

もう20年以上も前になるのだが、父親が建築家をしている友人のプチコロ氏が「とてもいいから行かないか」というので、市電に乗って出かけて行った。わたしたちはクリストフ・シュトラッセで降りたのだが、『クリストフ』は奇しくもプチコロ氏の父親の名前であった。

 ザンクト・アルバンはケルンの市立庭園の中にある。五角形をしたレンガ作りの建物が見えてくる・・・あとから聞いた話では、このレンガは、隣接していたオペラハウスの廃墟から流用したものだという。当時、建築に興味のなかったわたしの目には、その外観や入り口は何の変哲もないものに映った。

だが、中に入って驚いた。普通、教会の窓は壁に大きくスペースを取ってあり、そこから燦然と降り注ぐステンドグラスに光はまばゆいほどなのだが、ここの教会の壁はほとんどが閉じられていて、縦長、横長のごく小さな窓がいくつか開けられているだけなのだ。

 だが・・・そのなんと神秘的なこと・・・わずかに開けられている分だけ、文字通り、光は堂内に差し込んでくる感じで、中のわれわれはその矢に貫かれているかのようであった。窓、ひとつひとつを見ると、縦横の黒い線によって分割されており、そのうちのいくつかには滲みるような赤や青が施されてあった。それは、あたかもモンドリアンの絵のようであった。

 建築家はハンス・シリングという人なのだが、どうやらル・コルビュジェのロンシャンの礼拝堂から影響を受けているらしい。1958年に建てられた。ちなみにロンシャンの礼拝堂は1955年。ステンドグラスはフランツ・パウリという人である。

 なるほど、幾何学的抽象を思わせる縦横の線や赤、青、黄などの3原色はコルビュジェの影響なのだろうが、わたしはザンクト・アルバンの方が好きだ。ロンシャンの方は理念が先に立ってしまっているように思え、それゆえ知的で明快な感じがするのだが、ザンクト・アルバンは何かこう、人間の根源的なもの、本姓に触れてくるような気がするのだ。

 ケルンを訪れたら、大聖堂だけではなく、ぜひ『ノイ・ザンクト・アルバン』も訪れてほしい。幸せな気分になれること間違いなしである。

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