もとがあること

「もと」があること

先日、横浜美術館でモネの展覧会が開かれていたが、モネ関連で日本人作家の作品も多く展示されていた。

わたしがその中で感心したのは福田美蘭さんの作品であった。

安井賞の受賞作家である福田美蘭さんについては、いろいろなところですでに語られていると思うので、この独和珈琲絵画館では、少し変わったところから福田さんの作品の見方を語ってみたい。

もう30年以上も前・・・池袋にすいどーばた美術学院という予備校があり、東京藝大に多くの合格者を出していたので、当時、静岡に住んでいたわたしも、ちょくちょく講習会を受けに行っていた。

そのころ、「現役で芸大の油(油絵科)の受かった子がいる」ことが話題になっており、石膏と観葉植物などを組み合わせたその人の静物デッサンがロビーに飾ってあった。それが福田さんのデッサンであった。当時、東京藝術大学には何年も浪人しなくては入れず、現役で合格したものには少なからず、やっかむ声もきこえたのであったが、そのデッサンを見る限り、福田さんの技量は卓抜したもので、芸大に入ったのも当然に思えた・・・

それから三十年以上・・・福田さんの作品はいろいろなところで目にするようになった・・・そして今回のモネ展に出品された「睡蓮の池」を見て、その技量はますます冴え、円熟したものになっているように見えた。そしてわたしは唐突に別のひとりの画家を思い浮かべた・・・ピーテル・パウル・ルーベンス・・・

ルーベンスは先達の遺産を最大限に活用した人だと思う。ヤン・ファン・アイクによる油彩技法の確立からすでに一世紀以上が経った1577年にアントワープで生まれた。14歳で画家を志し、7年間の修行期間を経て独立。23歳からは8年間イタリアに滞在。ここではマントヴァ公に見出されて、当時の一級コレクションを見て、模写する機会を与えられた。ローマ、フィレンツェにも旅をしてミケランジェロやダ・ヴィンチにも接した。そして31歳でアントワープに帰り、堂々たる作品を次々と生み出していくのである。

今、パリのルーブルやウィーンの美術史美術館でルーベンスの絵を見て感心するのは、その大きさもさることながら、その色の冴え、画具の発色の良さである。確かな技法を熟練した人間が用いた証である。その技法がまた、十分に研究された構図、配色の上に施されているのである・・・

福田さんの「睡蓮の池」における画具の発色や筆致の冴えは素晴らしい。その素晴らしさは「過去の先達の遺産に拠っている」という確かさから来るように思われる。福田さんの作品を楽しむには、ひとつはその確かな技量を目でフォローすること、そして過去の先達の遺産を福田さんがどう扱っているか、いわばそのエスプリを楽しむことである。

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