絵を100%楽しむために

 

額縁に注目!

永年、展覧会を見てきて不思議に思うことがある。それは・・・

 展覧会ではたいていの場合、図録を作成する。わたしは見に行った展覧会で2~3点よいものがあれば必ず図録を買うことにしている。ところが・・・

 展示会場で大いに感じるところのある作品があった・・・帰りの電車の中で余韻を楽しもうと買い求めた図録を開くと・・・「ん・・・?」こんなはずではなかった・・・こんな感じではなかった・・・この画はもっとよかった・・・ということが結構あるのである。

 わたしなりにその原因をあれこれと考えてみたのだが、ひとつには肉眼とカメラのレンズの違い、および印刷による色や微妙な凹凸の再現に限界があることが考えられるであろう。だが、より大きなこととして、図録にはほとんど額縁を写し込んでいないことが挙げられる。

 これは本当に不思議なことだ・・・そしてもっと不思議なのは、このことについておかしいという意見をほかではまったく聞かないことである。誰も不思議に思わないのだろうか?

 絵画と額縁については、現代美術の世界ではいろいろと取り沙汰されているところだが、クラシックからモダンまで、いわゆるオーソドックスな絵画において、絵画と額縁の関係は裸体と衣装になぞらえることができるであろう。印刷された2次元の世界はさておき、リアルな世界では絵画と額縁は不可分な関係なのだ。

 わたしが実際に見て、絵画と額縁が実にセンス良くマッチングされているものを二つほど挙げておこう。

 まずはフィラデルフィア美術館所蔵、セザンヌの「水浴」。セザンヌはご存知のとおり、19世紀から20世紀初頭までを生きたひとだが、額縁はおそらくクラシック以前まで遡れるほどの年代もので、歳月を経てきているために、表面は波打っており、ところどころ千切れかかっていたりもするのだが、これがじつにいい取り合わせなのだ・・・

 また、スイスのザンクト・ガレン美術館所蔵、クロード・モネの「コンタリーニ宮」・・・これはちょっとわれわれの額縁観を超えるもので、あたかも一個の家具のようなのであるが、これもモネの描き出すコンタリーニ宮の深い紫にじつに良く合うのだ・・・

 このふたつはいくら言葉で言っても伝えきれないものなので、ぜひ実物をごらんいただきたい。そして・・・この独和珈琲絵画館の読者の皆さんは、絵を見るときにはぜひ、額縁にも注目して欲しい。大げさではなく、画が3倍は楽しめるはずである。

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