ボナールの裸婦像~本当にあるものはなんなのか

この秋、国立新美術館でボナールの大規模な回顧展が開かれる。そこで我が独和珈琲絵画館でも、彼の絵をるにあたってのトピックスを紹介しておこう。

彼の展覧会を訪れると、必ずと言っていいほど、おびただしい数の裸婦像に出会うことになる。これらの裸婦のモデルの多くはは「マルト」という一人の女性である。

 彼女は彼の妻となる女性であるが、正式に妻として入籍したのは1925年、なんとボナール58歳、マルト56歳の時であった。

そもそもボナールがマルトを見出したのは世紀末、パリの街頭でであって、それから30年以上もの間、彼らはいわゆる内縁関係にあったのである。マルトーじつはこの名前は彼女の本名ではなかった。「マルト」とあだ名された女性は移り気で人付き合いを嫌い、日がな一日、室内で過ごし、気が向いては入浴を繰り返した。

 俗にいう「浴女」、ドガやピカソも主題にしているこの情景はボナールが日がな一日実際に目にしていた光景だったのである。

 画家は彼女に妻としての役割を求めてはいない・・・社会的に彼女に貼り付けられるべきあらゆる目印やレッテルが消え去り、そこには「女」がいるだけなのだ。

ボナールは繰り返し「女」たるマルトを描いた。それは30年以上にも及び、しまいにはマルトは60代の裸身を画面にさらしているのだ。それどころではない。ちなみにマルトはボナールよりも先に死んでいるのだが、なんとマルトの裸身は彼女の死後も描き続けられるのである。これは異常なことなのだろうか・・・それはあなたが彼の絵を見終わった後で判断してほしい。

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